おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


(咲人さんを追い出したのは〝警察に逮捕させるため〟なんて、ウソですよね⁉)


顔面蒼白の私を見て。
雪光さんの雰囲気、再び一変。


「この空気にあの顔って、なんだか気が抜けるよね。周」

「ってか明らかに浮いてるよな。場違いにも程があるだろ」


(なんかヒソヒソ話してる、きっと策を練ってくれてるんだ!)


ヒソヒソ話の内容を知らない私は一筋の光を信じ、指を組んで二人を見つめる。すると私を見て「仕方ないなぁ」って顔で、雪光さんが笑った。


「咲人は飛び道具を持っているけど、人を殺したことはないよ。美談などではなく、どうやら不向きらしい。反対に、武術で彼より右に出る者はいないけどね」

「咲人さん、そうなんですか?」

「……そう」


咲人さんは恥ずかしそうに俯き、私とは反対側へ顔を向けている。

そう言えば紫吹と戦っていた時、飛鷹さんは命中させていたけど、咲人さんはかすっていたような……。


「こら、ミミ。思い出さなくていいから」

「す、すみませんっ」


ほのぼのした私たちを一瞥した後。
「さて」と、雪光さん。

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