おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「そして小野寺くん、これは情報提供なんだけど。その少女はリズ組の紫吹に狙われている。一人にさせると確実に攫われるよ」

「なんだと?」

「紫吹に対抗できるのは、ウチの周とそこにいる咲人しかいない。だから少女と咲人を離さない方がいい。少女を守れるのは、そばにいる咲人だけだ」

(雪光さん……)


もしかして――と、一つの考えが頭をよぎる。

もしかして雪光さんは、この台詞を言うために咲人さんを除名したんじゃないかって。「任務失敗の罰」という建前で、咲人さんに自由を与えてるんじゃないかって。そう思った。


「……」

(咲人さん……)


咲人さんを見ると、咲人さん自身も思うところがあったのか。

はたまた除名された瞬間に、雪光さんがココまで言うことを予想していたのか――もう反論しなかった。どうやら雪光さんに従うらしい。

もう同じ組織ではないし、雪光さんはボスではなくなった。それでも咲人さんは、彼の言う事を聞く。

その理由は……きっと上下関係以外の深い繋がりが、二人の間にあるからだ。

< 289 / 350 >

この作品をシェア

pagetop