おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「……借りを返さないと、って思う必要はないと思います。だって家族ですから。家族は、持ちつ持たれつなんですよ」
「持ちつ、持たれつ?」
「はい。借りを返す、じゃなくて。お礼を言う、でいいと思います。言葉だけでも、気持ちって伝わりますから」
雪光さんの口癖が、飛鷹さんに移っていたように――言葉って家族の絆を作ったり深める力がある。だから「ありがとう」の一言だけでも、きっと飛鷹さんは喜ぶはず。
「〝気色悪〟って言われそうだ……タバコも一緒に渡していい?」
「ふふ、きっと喜んでくれますよ」
「だといいな」
笑いながら目を伏せる咲人さんを見て、飛鷹さんの昔話を思い出す。
咲人さんと飛鷹さんは、親のいない孤児――つまり家族を知らない。
「ありがとう」って言えばいい所を、借りを返す・恩を売るって言っちゃうくらい、気持ちの伝え方が希薄なんだ。家族だからこそ、ラフでいいのに。