おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「咲人さん。生きていてくれて、ありがとうございます」

「ふっ。急だね」

「だ、だってっ」


顔を覆う指が、一本一本はがされていく。すると光がさし、愛する人の顔が見えた。

初めて見る、穏やかな笑顔。闇夜じゃなく太陽の下で笑う咲人さんは、とても幸せそうだ。


「咲人さん、好き……っ」

「俺も。まほろが好き」

「あぁ……違った。
〝好き〟じゃなくて、〝大好き〟でした」

「……」


「その言い直しって必要?」って笑うものだから。「好き」と「大好き」について語るべく、息を吸い込む。

だけど息を吐き出す前に、咲人さんに塞がれてしまった。……正確には、キスしようと近づいた咲人さんだったけど、直前で私の口を手で覆った。

同時に、耳を塞ぎたくなる音量の警笛。
鳴らしているのは、小野寺さん。


「警察の前で、堂々と、未成年にわいせつ行為とはな」

「未然に防いだだろ。キスはしていない」

「どうだか」

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