おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

二人がバチバチにらみ合っている横で「私と話す時と口調が違ってカッコいい!」と目をハートにする私。

もう何を聞いても何を見ても、全て咲人さんへの愛に変わってしまうのだから、間違いなく愛をこじらせている。


でも――それでいいんだ。
だって最初から、私たちは狂っていたのだから。


あのマンションで、咲人さんと私。変な関係になりながら、同じ時を過ごしたのだから。

ウソの愛とホントの愛を見極めようと、あがいて、もがいて、そして「ウソでもいいから」とむさぼり合った。


だから、愛がこじれるのは今さらだ。
もともと不安定な場所にいた私たちだ。


そんな私たちの間でしか生まれ得なかった愛を、これからも〝こじらせながら〟ゆっくり育てていきたい。


「じゃあ二人ともパトカーに乗って。今日のことと今までのこと、洗いざらい吐いてもらうからな」

「ミミは一般人だ。怯えさせたら許さない」
「咲人さんも、もう一般人ですよ!」

「……はぁ、君たちってうるさいな」

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