おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「俺は祝いに行くの。い・わ・い・に!」

「ムキになるところが怪しさ満点だ」

「ケッ。お話になんねーよ」


踵を返し、足をバタバタ鳴らして歩く。すると乱暴な背中に、柔らかな声がぶつかった。


「行ってらっしゃい、周」

「……いってきます」


チラリ振り返ると、なーんか優しそうなボスの顔。再びワケもなく心臓がくすぐったくなったから、急いで退出する。

――バタン!

すると思いのほか乱暴に閉まったドア。やっべーって思ったけど……絶対、まだ中で笑ってるよな。それなら謝りに戻るの、やーめよ。


「あーあ、ボスの考えてることが想像できるようになっちまった」


妙な腐れ縁にため息をついた時、スマホから通知が来る。見ると、大鳳さんとミミちゃんのGPSが動いていた。やっと署から解放されたのか。


「……って。
このGPSも、ボスからの受け売りじゃねーか!」


口グセも行動も、知らない間に真似ている。
なんでだよ、こえーよ。


「あーあ、もう。やってらんねーよ」


その時、窓ガラスに映る自分の顔。

その顔ですらも、さっきのボスみたいに優しそうで――「仕方ねーな」って。笑ったまま、ため息が出た。



*飛鷹 周* end


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