おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「あーあ。俺も大鳳さんも、ミミちゃんにかき回されちゃって。いい大人が泣けるねぇ」

「所詮こんなもんだろ、大人って。でも、いくら掻き回されてもすぐ順応できるのも大人なんだ」

「違いねーや」


そこへ、おもてなしの準備が出来た私が戻る。目線は、飛鷹さんの足。なにやらポケットから、細い紐が出ている。


「飛鷹さん、まさかソレ……クラッカーですか⁉」

「そー。二人のお祝いにパーンと!」


飛鷹さんが紐を引っ張る真似をすると、ひょいとソレが視界から消える。見ると、咲人さんがクラッカーを独り占めしていた。


「こんなもの鳴らしたら、発砲したと疑われるだろ。それに飛鷹、お前はお忍びでココにいるんだ。目立つの禁止」

「もうブツは取り上げられたんだろー?なら疑う余地がねーよ」

「そうですよ咲人さん。ここは一つ、盛大に!」

「……」


すると咲人さんは、私と飛鷹さんを残してキッチンへ行く。

引き出しを開けたり閉めたりした後。両手に持っていたのは、フライパンとフライ返し。


「クラッカーするのと、俺の手作りごはん食べるのと。どっちがいい?」

「……」
「……」


私と飛鷹さんは、互いに顔を見合わせた。
だけど次の瞬間、


「「手作りごはん!」」


タイミングの良さに、咲人さんが笑う。
そして「ちょっと待ってて」と。


この場に、新たな音を鳴らし始めた。



【 𝙚𝙣𝙙 . 】



※次ページからSSです
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