おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「うっかり手を出さないようにって、自分を抑えてるの。気を抜いたら食べちゃいそうなんだもん」

「た、食べ……⁉」


太陽よりスゴイ人に言われて、舞い上がらないわけがない。幸せで満たされた脳は、もう遥か彼方、太陽をこえて宇宙まで飛んで行った。


「でも今さら離れて寝るのも無理だよ。まほろがいないと眠れない」

「そ、そうなんですか?」

「うん。だから、ずっと傍にいて。分かった?」

「~は、はいっ」


優しく抱きしめられると、私の心臓さえも、きゅうと抱きしめられてる感覚がして。バクバクと、動悸が止まらない。いま血圧を測ると、とんでもない数値を叩き出す気がする。


「わ……私、汗かいたのでシャワー浴びてきます!」

「ついて行こうか?」

「だ、大丈夫です!」


超特急でバスルームを目指す私の後ろで、クスクスと。お上品に笑う咲人さんの声が聞こえる。


(これが〝大人の余裕〟……!)


その振る舞いを「カッコイイ」と思うけど、心のどこかで「余裕をなくした咲人さんを見たい」とも思う。

と言っても、咲人さんの一挙手一投足でアタフタしてるようでは、後者が実現するのは、まだまだ先の話だろうけど――


って。
そう思っていたのが、十二時間前。


だけど起床から半日経った、下校中。
意図せず私は、咲人さんの「余裕ない顔」を拝む事になる。

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