おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

咲人さんの顔から笑顔がなくなる。内心「チッ」って毒づいてそうだ。

反して私の心に、不安の嵐が渦巻く。
だって、だってだって――!


(相手は美女で、年だって咲人さんと近そうで……私が並ぶよりも、お似合いだ)


変な考えを巡らせていると、咲人さんが「白雪さん」と私を呼ぶ。

ちなみに――

二人きりの時は(盗聴器など最善の注意を払った後)まほろと呼んでくれる。
外に出たら、今まで通りミミ。
学校では「ただのボディーガードと守護対象」の関係で通ってるから、白雪さん。

バリエーションが豊富だからか、咲人さんから呼ばれるたびに新鮮な気分になる。

といっても、今は〝新鮮な気分〟よりも〝疎外感〟を覚えてしまうけれど。


「白雪さん。少しだけ傍を離れるので、俺が戻るまで教室にいてください」

「え、でも」

「今・すぐ・に、教室に戻ってください。いいですね?」

「は、はい……」

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