おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「んな!え、なんで!」
「ミミが見えたから、車を降りた。俺のことは気にするな。物見遊山中の観光客だと思え」
「そんな無理な話が通りますか……!」
下校時間ということもあって、校門の周りには数多の生徒がいる。その全員が全員、紫吹に釘づけだ。
とはいっても「関わるとヤバい」と直感で分かるのか、紫吹に絡まれた私を助けようとする生徒は一人もいない。
皆さん、それ大正解です。
こんな人を見つけたら、財布を覗いてため息つくのはやめましょう。私みたいに「金がほしい女」だと勘違いされて、連れ去られるよ!
「こ、こんな所で堂々と……捕まりますよ!」
っていうか捕まってください!と目で訴える私をスルーした紫吹は、校門に掲げられた校名を、しげしげと見ていた。
「なるほど、ここに通っているのか」
(げ、個人情報がバレちゃった!)
青ざめた私を、まるで舌なめずりするように。紫吹は片方の口角を上げ、私を覗きこむ。