おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「ミミの情報は、ご丁寧に何重にも鍵がかかっていて開けられない。どうにか突破しようとしたが、組の全員がお手上げだ。唯一の手掛かりは〝高校生〟。片っ端の学校を探したぞ。まさか今日、当たりを引くとはな」
「ひ、暇なんですか……?」
「バカ言え」
くわえたタバコに手をかけ、口から一度外す。フーと吐く息は、雲一つない空に近づくことなく消えていった。
だけど紫吹には、ずっと煙が見えているのだろうか。とうに消えたはずなのに、視線が変わらない。
「タバコの煙は、夜だと高く上がるように見えるのにな。だから太陽の下は嫌いなんだ。俺ら〝裏〟が、ちっぽけに見える」
「……」
「あぁ、すまない。
で、攫われる準備はできたか?」
「……あの」
生徒から視線が突き刺さるのがいたたまれなくて、手を挙げる。
「場所を変えて、お話ししませんか?」
「度胸があるのか、単なる悪あがきか――いいぞ、付き合ってやる」
小ばかにしたような言い方に、カチンとくる。だけどさっきの憂いは紫吹の顔からスッカリ消え、元気を取り戻したように見えた。
◇