おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

その〝ある人〟が雪光さんだと理解する前に、一つの問題に気づく。

ここに今、リズ組のボスと、ビトラ組のボスの右腕が揃ってるわけだよね?


(わ、私、逃げた方がいいよね、絶対……‼)


サーッと顔を青くした私に、飛鷹さんがウィンクを飛ばしてくる。……何のウィンク?


飛鷹さんは現在、紫吹の背後に立っている。立っているだけ、なんだけど……どこか変な格好をしている。

ダボダボなズボンのポケットに手を入れたまま、飛鷹さんは紫吹の背中にピッタリくっついていた。ポケットの中で何か持っているのか、変な形にズボンが膨らんでいる。


え、まさかソレって――となんとなく中身を想像できたところで。飛鷹さんが、紫吹に耳打ちする。


「先にアンタの部下を片付けさせてもらった。安心しな、向こうでのびてるだけだ――おっと、何かしようと思うなよ。ここがビトラ組の敷地内だって、アンタも知ってるハズだ。

変な行動したら、頭が吹き飛ぶぜ?」

「……」

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