おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
皆の死角から現れたのは、目がすわっている咲人さん。彼の周りに蜃気楼でも出来たのか、景色がメラメラ揺らいでいる。
うごめく空気。
どよめく観衆。
漂うオーラ。
(ひょっとしなくても、大ピンチ⁉)
咲人さんの目つき、声のトーン。
朝の「天使」は一体どこへ……。
「さ、咲人さん!来てくれて良かったです」
「よう、大鳳さん。おひさー」
「……そろそろ時間だ」
ガタッと席を立ったのは飛鷹さんと紫吹、両名。
私も続けて立ち上がろうとしたら、咲人さんに制された。チラリと顔を盗み見ると、「逃がさない」と書いてある。
やばい、これは早急に、話題を変えなければ!
「咲人さん!ほら、目の前に紫吹がいますよ?」
「おい。俺を売るな」
既に立ち上がった紫吹から、ギンッと睨まれる。見下されると、なお怖い……!
だけど今の咲人さんは、紫吹の上を行く怖さだ。前、警官たちに「紫吹より、怒った咲人さんの方が怖い」と話したのは、やっぱり嘘じゃなかった。