おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「ミミ。紫吹がここにいても、俺は何もできないよ」
「と、言うと?」
「紫吹と飛鷹が、こんなに近くにいる――それは事前に二人で話し合ってないと、成り立たないことだ。その関係に、裏世界にいない俺が口を挟む事は出来ない。タブーだから。
というわけで、後は頼むぞ。飛鷹」
「あいよー。敵さんには大人しく帰ってもらうから、ご心配なくー」
出口と紫吹を交互に見ながら、顎をクイと動かす飛鷹さん。だけど紫吹は「おい、ミミ」と。テーブルに手をつき、私に顔を近づける。
「コイツ(咲人さん)が嫌なら、今すぐ俺が連れて帰る。ミミの同意があれば、攫った事にはならない」
「え」
「……おい紫吹」
一気にピリついた空気を、店内にいる皆も察したらしい。賑やかだった場は、突如として静まり返った。
その空気をいち早く察した飛鷹さんが、火消しのために「どこから来たのー?何歳ー?」と、よくあるナンパの定型文を口にして回る。イケメンに話し掛けられ、お客さんたちは満足そうだ。徐々に、店内に活気が戻る。