おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
反して、今だ物々しい雰囲気が、こちら。
何といえば紫吹に角が立たないか、と考える私の視界が、いきなり真っ暗になる。どうやら目を覆われたらしい。
耳の近くで聞こえるのは、咲人さんの凛々しい声。
「前にも言ったろ。ミミは、俺のだ」
「俺はミミに聞いたんだが?」
「それでも、俺のだ。諦めろ」
「……」
物騒な人物たちが、物騒な空気を出すものだから、ついに見かねた店長がやって来る。
「他のお客様が、怖がっておりますので……」
一時休戦。咲人さんも紫吹も、互いから視線をそらして浅い息を吐く。少し頭が冷えたみたいだ。
「フン、あの大鳳を骨抜きにさせるなんてな。どこまでも興味深い女だ」
ポン、と。私の頭を、紫吹が撫でる。一瞬のことだった。
「とっておけ。俺の連絡先だ。何かあったらココに電話しろ」
「おい俺にもくれよ。ボスへの手土産になる」
「110って書いて渡してやろうか?」
「ケッ、いらねーよ」
急に割って入った飛鷹さんを、紫吹が押しのける。反対に私は、差し出された紫吹の手を、ゆっくり押し返した。