おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「私は咲人さん中毒なので。一生、必要ないです」
「ミミ……」
私の手をとり、引き寄せる咲人さん。そんな私たちを見た紫吹は「クソほど胸やけするな」と悪態をつき、今度こそ退店した。その姿を確認した飛鷹さんは、電話で「念のため後をつけろ」と、仲間に電話をする。どうやら、心の底から気を抜いているわけではないらしい。
「さてと」
短い電話が終わり、スマホをポケットに戻した飛鷹さん。その顔には、呆れた笑みが浮かんでいる。
「公衆の面前でハグ?よく恥ずかしくないよなー」
「卑猥な言葉を堂々と言っていたお前よりマシだ」
「ハハ、そう言わずに。お詫びに〝アンタが元気そうだった〟ってボスに言っとくわ」
「ボス」と聞いて、咲人さんの全身が脱力していく。さっきまでのピリピリモードは、どこへやら。口には弧が描かれている。
「あの人なら、GPSや盗聴器やらで常に俺のこと把握してるだろ」
「ハハ!違いねぇや」
笑いながら飛鷹さんは「んじゃ、お幸せに~」と、手を振って退店した。お店に残ったのは、咲人さんと私と、溶けかけのアイス。
「……ちょうだい」
「え?」
「ミミのアイス。俺に、あーんして」