おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


(〝俺にアーンして〟⁉)


咲人さんのオンとオフのギャップが激しい。さっきまで、店内を静まり返らせる殺気をまとっていたとは思えない。


「い、今は外にいますし……私は制服着てますし、ね?」

「……ちぇ」

(舌打ちじゃなくて、〝ちぇ〟っていうの尊……)


涙がツーと、頬を流れる錯覚。
さっきまでの邪気は、ご本人により浄化されました。


「ふふ、アイス食べてる咲人さん。かわいいですね!」

「……茶化さないでよ」


少し耳を赤く染めて、膨れっ面をする咲人さん。私に見られて食べずらいのか、いつもより口の可動域が少ない。

何より萌えるのが、ボディーガード中の咲人さんはスーツだから、長袖のワイシャツを肘までまくっていること。食べる時にネクタイが邪魔にならないよう、胸ポケットにさしていること。


(スーツって、こんなに罪深いんだ……)


大の大人が、可愛いアイス屋さんで、スーツが汚れないよう気にしながら、アイスを頬張っている――それだけで、とんでもないご褒美だ。私にとっては、アイス屋さんでアイスを食べることよりも、アイスを食べる咲人さんを見る方が、至極の幸せ。

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