おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

もちろん、咲人さんに気付かれないように激写した……いや、バッチリ気づかれたけど。


「こら。撮ったね?」

「と、撮りました。あまりの美しい風景に、抗えませんでした……」

「なにそれ」


プハッって笑う咲人さんの、なんと尊いこと。これはもう、写真をプリントアウトして、額縁に飾るしかない。そして起きた時と、寝る時に毎日拝もう。この尊さが、未来永劫、輝きを放ちますようにと――


「ミミ、ミーミ」

「あ、すみません!何ですか?咲人さん」

「ボーッとしないでよ。せっかくの初デートなのに」

「初、デート……?」


薄い唇から何を言われるかと思ったら、初デート?


「朝約束したでしょ。ココに来ようって」

「あっ」

「ふふ、やっとデート出来たね」


目が細くなるほど、笑ってくれる咲人さん。

こんなの見たら、幸せをかみしめるしかなくて……少し潤んだ瞳を隠すように、髪をいじった。


(あぁ……幸せだなぁ)

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