おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

一か月もの間、飛鷹さんとタッグを組んで私を追い出そうとした咲人さん。私が見事に騙された敗因は、やはり咲人さんの演技力あってこそだ。

そして、今も然り。

本当は飛鷹さんの言葉がずーっと気になっていたのに「初デートだ~」と私を浮かれさせておいて、後に責める敏腕ぶり。


「飛鷹と何回キスしたの?」

「え、や、その……」

「いつかキスマークをつけられてたもんね?」

「そ、そんな事ありましたっけ?」


すっとぼけても、なんと意味のないことか。

咲人さんはニコリと笑った後、目が泳ぐ私の両頬をガッチリ押さえ、靴を履いたまま玄関扉に追いやる。

私の背中が、ピッタリ扉についている。目の前には、私に覆いかぶさり、顔を近づける咲人さん。


「どこを触られたって?」

「え、や……あの、」

「ココ?」

「ひゃ!」


どこも触られてない……のに、体を見られるだけで、内側から火照っていく。全身から、汗がにじむ。

後ろは扉、前には少しの隙間もなく咲人さんの体が引っ付いている――ゴクリ。

これは、もう逃げられない。

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