おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「飛鷹とキスした時、目は閉じた?」

「え」

「この中にまで入ったってこと?」

「っ!」


トンと、指で唇をノックされる。概ねその通りだけど、そんな事、氷点下中の咲人さんに言えるわけもなく。かと言って、ウソをつくことも憚られ、苦渋の決断で「忘れました」とホラを吹く。

しかし、そこまでの思考を見抜いた上で、咲人さんの攻撃はやまない。


「今から五分」

「何が、ですか?」

「ミミにキスし続ける」

「なんで、ですか……?」


咲人さんが、フッと笑う。まるで私をあざ笑う、不敵な笑み。


「上書き、って言葉は知ってる?

じゃ――始めるよ」

「んっ!」


そこから先は、どうしようもないくらいキスの雨が降って来て。どうしようもないくらい、息苦しくなった。


「や、も、もう……っ」

「まだ。あと三分」

「ん――っ!」

< 340 / 350 >

この作品をシェア

pagetop