おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「はー……ごめん。ちょっと頭冷やしてくる」

「え、急に⁉」


咲人さんは顔を手で覆ったまま、扉の取っ手に手を伸ばす。そのまま出て行こうとするから、思わずスーツをつかんだ。


「待って、行かないでくださいっ」

「……やだ、行く。ミミと離れないと、何をするか分からないし」

「何をしてもいいです」

「始まったら止まれないし」

「止まらなくても、いいです」

「ダメ。よくないです」


ピシャリと言われ、思わず後ずさる。といっても、背中には玄関。うぅ、八方ふさがり!悔しさを唇で噛み締める。


「私は、ずっと咲人さんとそういう事をしたいって思ってたんです!だから止まらなくても、大丈夫です」

「……」

「ダメ、ですか?」

「……はぁ~」


ため息をついて、咲人さんは再び膝を折った。大きな人が急に小さくなるのは、ビックリするけど可愛い。


「ミミは……俺を煽るのが上手いよね」

「煽ってません、大好きなだけです」

「そういうのを〝煽る〟って言うんだよ」


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