おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

座ったまま、私を抱き寄せる。と言っても、お互いの膝が邪魔で上手くハグできない。

「……離れようか」
「そうですね……」

仕方なくハグは諦めて、互いの顔を見ることに専念した。


「私が言った言葉、覚えてますか?」

「ん?」

「キスの練習がしたい、って言葉です。
私、ずっと待ってるんですよ?」

「……あぁ、そう言えば」


一か月前の事を思い出し、咲人さんがフッと笑う。


「あの時は〝キスが下手〟でも言わないと、止まらなくなっちゃいそうだったからね。本心じゃない」

「じゃあ、私のキス上手いですか?」

「……うーん」


笑いながら立ちあがる咲人さん。何が面白いのか、クスクス笑っている。


「忘れたから、確認させて」

「え、わぁ!」


ふわりと浮いた私の体。
咲人さんの顔が、すぐ近くにある。

これは……お姫様抱っこだ!


「試すのは、キスだけですか?」

「ミミの希望は?」

「言っても、咲人さんはしてくれないでしょ?」

「さぁ、どうだろうね」

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