おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
廊下を歩き、寝室へたどり着く。まるで壊れ物をおろすように、ゆっくりした動きで私の背中がベッドに触れた。
ドキドキ半分、諦め半分。
咲人さんは今、どっちの気持ちなんだろう。
「ねぇ、俺がイイ大人に見える?」
「え?」
いきなりの質問だったけど。
悩む間もなく、高速で頷く。
「ふふ、じゃあ今から裏切られるわけだ」
「裏切られる?」
「俺が〝イイ大人〟じゃないって事、これから教えてあげる。だから――
覚悟してね?まほろ」
「!」
グイッとネクタイを緩めた咲人さんの艶めかしさったらない。
顔に両手を乗せ「きゃー」と興奮しながら、指の隙間からバッチリ観察する。もちろん、バレて笑われたけど。
「こら。悪い子」
「あぁ、もう咲人さん。大好きですっ」
「もう何回も聞いた。でも、なんでだろうな」
何回きいても嬉しくて、飽きないんだ――
そして咲人さんは私にキスを落とす。今度は離れていかないように、彼の首に手を回した。ついでに力を入れると、二人の口づけがさらに深くなる。