おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

廊下を歩き、寝室へたどり着く。まるで壊れ物をおろすように、ゆっくりした動きで私の背中がベッドに触れた。

ドキドキ半分、諦め半分。
咲人さんは今、どっちの気持ちなんだろう。


「ねぇ、俺がイイ大人に見える?」

「え?」


いきなりの質問だったけど。
悩む間もなく、高速で頷く。


「ふふ、じゃあ今から裏切られるわけだ」

「裏切られる?」

「俺が〝イイ大人〟じゃないって事、これから教えてあげる。だから――

覚悟してね?まほろ」

「!」


グイッとネクタイを緩めた咲人さんの艶めかしさったらない。

顔に両手を乗せ「きゃー」と興奮しながら、指の隙間からバッチリ観察する。もちろん、バレて笑われたけど。


「こら。悪い子」

「あぁ、もう咲人さん。大好きですっ」

「もう何回も聞いた。でも、なんでだろうな」


何回きいても嬉しくて、飽きないんだ――


そして咲人さんは私にキスを落とす。今度は離れていかないように、彼の首に手を回した。ついでに力を入れると、二人の口づけがさらに深くなる。

< 348 / 350 >

この作品をシェア

pagetop