おりの中、狂った愛を、むさぼり合う


「えっと、あの。これは、ですね……」


素直に言ってしまえばいいんだろうけど……でも、引かれないかな?床のひんやりで涼をとっていました、なんて。汚らしいって思われないかな?

と、モヤモヤ考えている間も。
咲人さんは私へ目を向けたまま。

咲人さんは背が高い。だから私の顔を見た後、視線を下げ、さらに下げ、もっと下げて。やっと私の足にゴールする。……そういえば、咲人さんから見上げられた事がないなぁ。

咲人さんの上目遣い。
うわぁ、すごく見たい!


(咲人さんが椅子に座っている時、隣に立ってみようかな)


咲人さんの未知の姿を想像し、へらっと笑った私を見て。咲人さんは「へぇ、そんなにいい事あったんだ」と無表情で呟いた。


「いいこと?何もないですよ?ただ暑くて、」

「エアコンがあるのに?」

「エアコンがない場所にいたんです」

「エアコンがない〝部屋〟は、ウチに一つしかないけど?」
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