おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

咲人さんは、私に対する返事はまちまちだけど、話そのものは聞いてくれる。今朝だって「キスしたい」と言って「嫌」と返事が来るくらいには、会話のキャッチボールが出来ていた……

はずなのに。


「下着とっちゃっていい?上も下も邪魔だし」

「な、なんでそうなるんですか⁉」

「ミミも暑いって言ってたもんね、じゃあ切ろうか」


全く会話にならない。ばかりか、こんな時も咲人さんは有言実行するタイプらしく、じりじりと柄に力を入れる。

数秒後、ジャキッと鈍い音がした。見ると、ハサミの腹が食い込み、ストラップに亀裂が入っている。


「ま、待って……」

「……」

「待ってよ、咲人さん!」


一思いにストラップを切ろうとした咲人さんに、力の限り思い切り抱き着く。そして咲人さんに散々拒否されたキスを無理やり重ねた。

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