おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
(お願い咲人さん、止まって……!)
咲人さんが何も喋れないように、何もできないように。たくさんの時間をかけて唇を合わせる。咲人さんの意識をそらそうと必死だった。必死の思いで、彼の唇を貪り続けた。
きっと今までで、一番へたくそなキスだったと思う。
いつもは咲人さんの反応を見ながらキスするけど、今は唇を離されないよう縋りつくだけで精一杯。咲人さんがどういう表情しているかなんて、チラリとも見る余裕はない。
(でも、それでいい。こんなへたくそなキスでも、咲人さんが正気に戻ってくれるなら)
さっき、咲人さんが咲人さんじゃない気がした。正気じゃない気がした。
咲人さんは私にいつも冷たいけど、だからと言って私自身や私の物を傷つけることは絶対にしなかった。そういう咲人さんだからこそ、私は好きになったんだし。