おりの中、狂った愛を、むさぼり合う

冷たい言葉はそのままだけど、さっきまでの獰猛さは感じない。つまり〝いつもの咲人さん〟。何の変化があったかは分からないけど、どうやら正気に戻ったみたい。

だけど安心するのは早い。

私の唇のわずかな隙間から、咲人さんは親指をねじこんだ。まるで内側を撫でるような手つき。静電気に似た突発的なしびれが、汗ばんだ背中を細かく伝う。


「口、開けて」

「それで開けたつもり?」

「もっと、俺を食べるつもりで」


少し乱暴なキス。それでも、体の底から気持ち良くなっちゃうキス。

やっぱり私がするキスとは全然違う。咲人さんからのキスは、極上だ。

< 67 / 350 >

この作品をシェア

pagetop