おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
(このまま、もう一回キスできないかな)
邪な考えが頭をよぎった時。
廊下の奥から、大きすぎる咳払いが聞こえた。
「ごほ、ごほごほ!あー、暑ぃ。エアコンなくて死にそーだわ。ミミちゃん水くれぇ〜」
(げぇ、飛鷹さん⁉)
飛鷹さんの声を聞いて固まる私。同じく、何かにハッと気づいたように……いや、気付かされたように。私に伸ばそうとした手を止める、咲人さん。
「どうかしましたか?」
「……いや」
行き場をなくした手は拳を作り、空を握ったまま元の場所へ戻る。その瞳が揺れていたのを知るのは、この暗闇のなか月光だけ。