おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
愛の瞬殺


元々は物置部屋だった部屋に、当たり前だけどエアコンはついてない。そりゃ熱いだろうな、あの部屋は窓もないし……。

でも、だからと言って!
こんな良いタイミングで呼ばないでよー!


「ミミちゃーん、早く水くれ〜」


「……呼ばれてるけど?」
「え、何か聞こえました~?」


知らぬ存ぜぬを貫いていると、咲人さんは私のおでこに手を置いた。

咲人さんの手は大きいから、私の目まで一緒に覆われる。すると視界のほぼ全てが咲人さんの手という、とんでもない絶景。


(ひゃ〜眼福……ん?)


手の隙間から、咲人さんの顔が見えた。さっきまでの笑みは消えていて、どこか儚げだ。


「咲人さん?」

「……良い感じに冷えた」

「?」

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