おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
「……え?」
突然の言葉に、頭は真っ白。
混乱の極地へ、一足飛び。
これは本当に現実――?
咲人さんに拒否されたことはあっても、拒絶されたことはなかった。こんな風に突っぱねられたのは初めてで、だからこそ、どう反応していいか分からない。
いつもの意地悪?
めずらしい冗談?
それとも……本気?
「どうして、そんなこと言うんですか?」
「口にしたのは今だけど、いつも思ってたよ」
いつの間に離れたのか。咲人さんは一歩下がった場所で、静かに私を見下ろした。
栗毛の前髪からのぞく冷たい瞳。
容赦なく私を突き放す鋭い言葉。
温度の無い声色――さっきの言葉を肯定しうる、最適な条件たちが揃っている。
(〝嘘だよ〟って笑ってくれないの……?)
どこかに気持ちのほつれがないか探るも、咲人さんは鉄壁だった。ウソをついたり、虚勢を張った様子がまるでない。
つまり、本気。