おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
血が苦手――ついさっき話題になったワード。頭の中に、飛鷹さんとの会話が蘇る。
『血は苦手?』
『はい、苦手です』
『それ、アイツにも言ったことあんの?』
『もちろん。咲人さんも今まで、何回か血をつけて帰ってきましたから。その都度お話しましたよ。あまり聞く耳を持ってくれなかったですが……』
咲人さんは今日、血の付いた服で帰って来た。だけど隠した。私に見せまいと、この暑さの中コートまで着て。上半身裸になってまで、血付きの服を隠し通した。
その努力は、私のため。私が「血が苦手」という話をちゃんと聞き、覚えていたから。
(ずるい……っ)
つまらない私の話を聞いてくれる。
私という人物を知ろうとしてくれる。
知った上で、関わろうとしてくれる。
なんでもない素振りで応えてくれる。
そんな事をされて、喜ばない女子はいない。
(咲人さん、咲人さん、咲人さん……!)
心臓が爆発する。
切なさとキュンが交差する。
そして思い知らされる。
どうしたって私は、咲人さんが好きなんだと。