おりの中、狂った愛を、むさぼり合う
(さっきのキスが、もう遠い昔のことみたい……)
今までの二人は、さっきの一瞬で砕け散った。どこを探しても、もう思い出のカケラは見つからない。私の中にあるのは、悲しみばかり。
「私、今までどうやって生きてましたっけ……」
「うわ、おっも」
「自分の体が重くて、もう歩ける気がしません……」
「そういう重いじゃねーよ」
悲しくて、悲しくて。
私の体の中、心の中。
ぜんぶ全部、悲しい気持ちしかなくて。
さっきまで暑かったのに、今はパジャマを着ていても体が温まらず、ひんやりしている。エアコンが効いてきたっていうよりは、体温を失った感じ。まるで自分が生きてないみたい。
……いや「みたい」じゃないか。
だって私の全ては、咲人さんで出来ているから。
好きな人に全身全霊をかける私に、咲人さんの一言は強烈すぎたんだ。