オレンジの空は今も
「どうしよっかなぁ」
ノートを広げなから講師に質問をしている数名の学生と共にポツンと残され、その光景を上の空で眺めていたとき、長椅子からブルブルと伝わる振動にようやく気づいた。
慌ててバッグの口を広げ、青色に点滅する携帯を開く。
『由希、講義中?だったらゴメンね。
ものすごーく美味しいチーズケーキを見つけたの♪
次の旅行は金沢で決定ネ!
ぜーーったい美味しいからっ(≧▽≦)/
楽しみにしてて♪
これからダーリンと尾山神社に行ってきまーす♪』
加奈からの浮かれメールが目に飛び込んできた。
「まったく」
返信ボタンを押しながら、予想外に大きくもれた言葉がホールに響く。
怪訝な表情を浮かべてチラリと視線を投げる講師と目が合い、
きまりが悪くなったあたしは、いそいそとロビーへ降りた。