オレンジの空は今も
あたしはその事故のことがまるで思い出せないでいた。

自分がどうして事故にあったのか、なぜその場所にいたのかさえ、その時の記憶が完全に抜け落ちていた。


母親も加奈も、そして詩織も百合子も、その事故について詳しく語ることはなかった。


覚えのないあたしも、特に問い質すこともせず、リハビリに専念した。


こんな目にあわせた事故のことなんて、思い出さずにいたほうがよかった。



思い出したくもなかった。





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