オレンジの空は今も
激しく首を左右に振り、加奈が話題を変えた。


「このケーキね、駅前に新しくオープンしたケーキ屋さんのなの。楽しみっ。早く帰って食べよっ」


加奈がうろたえて無理やり明るく振る舞っているのが、手にとるように分かった。

あたしと視線を合わせようとしない。


「加奈…ヒロト…って…」

「何でもないのっ。間違っちゃった。それより――」


「ヒロト――」


口の中でその名前をつぶやく。


どこかで聞いた。


ううん、むしろその名前を何度も呼んだはずだ。





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