オレンジの空は今も

ふらふらとたどり着いたのは近所のマンションの屋上だった。


時折、強い風が吹きつけて、その度に足元がすくわれる。


鉄柵に手をかけた。


下を見下ろすと、そのまま地上へ引きずられそうだった。


――ここから飛び降りれば楽になれる。


何もかも忘れて、宏人のそばへ行くことができるんだ――


「由希!! 何してるの!?」


右足を鉄柵にかけた時だった。

背後から叫ぶ人の声が聞こえた。

ぐいと腕を引っ張られ、そのまま後ろへ倒れこむ。


――加奈だった。





< 142 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop