オレンジの空は今も
最後の奇跡
膝の上に重なる白い便箋に、イチョウの影が伸びている。
ペンを置くと、朱色の大きな太陽が空を深いオレンジ色に染め上げていた。
あの日ふたりで見た夕焼けと同じ景色が一面に広がっている。
「宏人…見てる? あの日と、同じ空だね」
目の前に広がる、
ただ一色のオレンジの毛布に包まれながら、そうつぶやいた時だった。
―――突然、強い風が通り過ぎた。
足元の落ち葉を巻き上げ、イチョウの葉をざわりと揺らす。
けれど、決して鋭さのない、どこか懐かしい香りを含んだその風は、
膝の上の便箋をともなって高い空へと登っていった。
舞い上がった幾枚もの手紙は次第に小さくなり、色を変え、
やがて、
深いオレンジの向こうに溶けていった―――