オレンジの空は今も
「あの、赤い人?」

「そうそう。何してるのかしら」


加奈が首をかしげる。


「あれ…? 誰かと一緒じゃない?」


まだ水着を膝の上にのせたままの詩織がその姿を捉えた。

あたしも、歩道の人ごみのわずかな隙間にその姿を探しだすと、一瞬息を呑んだ。


「腕・・・組んでるよね」

「組んでるね」

「誰? あの女」

「分かんない・・・」


人ごみと距離で、その顔までは窺えなかったが、跳びはねるような女の子の様子と水色のワンピースが見えた。

やがてしばらくすると、ふたりの姿は人ごみに紛れて見えなくなった。




< 73 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop