甘×辛MIX
○オフィス内リフレッシュスペース(昼休み)
杏璃「近藤さん!」
「さっきの件、一体どういうことですか」
休憩中にリフレッシュスペースでくつろぐ千秋を見つけ、駆け寄る杏璃。
ふたりがけのテーブル席にいた千秋は、杏璃に気づいてスマホをいじっていた手を止めた。
千秋「どうもこうも、全部あんたのためだよ唐沢」
杏璃「おっしゃることの意味がわかりません」
杏璃が言い返すと、千秋は小さくため息をついた。
千秋「あんた、最近企画が通らないの焦ってるでしょ」
千秋の指摘に、杏璃は言葉に詰まった。
千秋は空いている椅子を示した。
千秋「とりあえず座んな。1杯奢るから。コーヒー?」
杏璃「…はい」
テーブルにコーヒーが入ったカップがふたつ並ぶ。
杏璃「(うつむいたまま)ありがとうございます…」
小声で礼を言い、カップを握る杏璃。ふぅっと息を吹き込み、一口こくりと飲み込む。
千秋は頬杖をついて杏璃の様子を見ていたが、杏璃の頬がわずかに緩んだのを確認して口を開いた。
千秋「唐沢。私はあんたの実力を買ってる」
「まだ若いからって渋る部長たちを説得して、あんたをサブチーフに就任させたのも私だ」
杏璃は目を伏せた。
杏璃「千秋さんにはいろいろお世話になってます。力にもなりたいです」←名前に呼びかえることで親密さをアピール
「でも、(ぐっと膝の上で拳をつくる)ただでさえ企画がまとまらないのに、インターンの子の面倒なんて…」
杏璃の脳裏に、後輩たちの失望した顔、先輩や同期の嘲笑がよぎる。
千秋が頬杖をつくのとは逆の手で、指先を使ってテーブルをコツコツと叩いた。
千秋「あんたがスランプに陥ってるのは知ってる」
「だからこそ、別の刺激が必要なんじゃないの?」
杏璃「(少し気色ばんで)だとしても、1言相談が欲しかったです」
「それに私、愛想も悪いし、人になにか教えるのも苦手で…」
徐々に声が小さくなる杏璃に、千秋は一瞬目を丸くさせてぷっと吹き出した。
千秋「あっはは! そんなの私が1番知ってるよ」
「そうだねー。あんたは確かに笑顔も少ないし、言葉も足りない。アイデアマンとしては優秀でも、社会人としてはまだまだ未熟だね」
千秋の指摘がグサグサと杏璃の胸に突き刺さる。
しかし千秋の表情は変わらず優しいままだった。
千秋「だから余計にあんたに面倒を見てほしいんだよ」
「みんなから完璧だってもてはやされるような社員でも、至らない部分はたくさんある」
「(杏璃の頭をぽんと撫でて)ちょっとくらい欠点があるほうが、魅力的な人間になるってね」
一瞬感動しかけた杏璃だが、すぐさま冷静さを取り戻す。
杏璃「それ、褒めてはいないですよね?」
千秋「まあ、いいじゃん」
ジトっと見た杏璃を笑って受け流し、空になったカップを持って千秋は立ち上がった。
千秋「若者から直接話を聞くいい機会でしょ」
「企画のことは別の人に一旦任せて、あんたは天野くんのほうに専念しな」
杏璃「千秋さん…」
千秋は気遣わしげに杏璃を見た。
千秋「唐沢にはここで潰れてほしくないからさ」
「(にっと口角を上げて)いずれ私のあとを継いで、うちの課を引っ張ってってもらう予定なんだから」
千秋からの信頼に満ちたセリフに頬を染める杏璃。
杏璃(この人のこういうところ、見習わなきゃなぁ…)
照れくさくなった杏璃は千秋から顔を背けたが、横顔がまだわずかに染まっていて喜びを隠しきれていなかった。
杏璃「やれるところまでやってみます」
千秋「よく言った!」
千秋のカップが杏璃のカップをコツンと小突いた。
杏璃「近藤さん!」
「さっきの件、一体どういうことですか」
休憩中にリフレッシュスペースでくつろぐ千秋を見つけ、駆け寄る杏璃。
ふたりがけのテーブル席にいた千秋は、杏璃に気づいてスマホをいじっていた手を止めた。
千秋「どうもこうも、全部あんたのためだよ唐沢」
杏璃「おっしゃることの意味がわかりません」
杏璃が言い返すと、千秋は小さくため息をついた。
千秋「あんた、最近企画が通らないの焦ってるでしょ」
千秋の指摘に、杏璃は言葉に詰まった。
千秋は空いている椅子を示した。
千秋「とりあえず座んな。1杯奢るから。コーヒー?」
杏璃「…はい」
テーブルにコーヒーが入ったカップがふたつ並ぶ。
杏璃「(うつむいたまま)ありがとうございます…」
小声で礼を言い、カップを握る杏璃。ふぅっと息を吹き込み、一口こくりと飲み込む。
千秋は頬杖をついて杏璃の様子を見ていたが、杏璃の頬がわずかに緩んだのを確認して口を開いた。
千秋「唐沢。私はあんたの実力を買ってる」
「まだ若いからって渋る部長たちを説得して、あんたをサブチーフに就任させたのも私だ」
杏璃は目を伏せた。
杏璃「千秋さんにはいろいろお世話になってます。力にもなりたいです」←名前に呼びかえることで親密さをアピール
「でも、(ぐっと膝の上で拳をつくる)ただでさえ企画がまとまらないのに、インターンの子の面倒なんて…」
杏璃の脳裏に、後輩たちの失望した顔、先輩や同期の嘲笑がよぎる。
千秋が頬杖をつくのとは逆の手で、指先を使ってテーブルをコツコツと叩いた。
千秋「あんたがスランプに陥ってるのは知ってる」
「だからこそ、別の刺激が必要なんじゃないの?」
杏璃「(少し気色ばんで)だとしても、1言相談が欲しかったです」
「それに私、愛想も悪いし、人になにか教えるのも苦手で…」
徐々に声が小さくなる杏璃に、千秋は一瞬目を丸くさせてぷっと吹き出した。
千秋「あっはは! そんなの私が1番知ってるよ」
「そうだねー。あんたは確かに笑顔も少ないし、言葉も足りない。アイデアマンとしては優秀でも、社会人としてはまだまだ未熟だね」
千秋の指摘がグサグサと杏璃の胸に突き刺さる。
しかし千秋の表情は変わらず優しいままだった。
千秋「だから余計にあんたに面倒を見てほしいんだよ」
「みんなから完璧だってもてはやされるような社員でも、至らない部分はたくさんある」
「(杏璃の頭をぽんと撫でて)ちょっとくらい欠点があるほうが、魅力的な人間になるってね」
一瞬感動しかけた杏璃だが、すぐさま冷静さを取り戻す。
杏璃「それ、褒めてはいないですよね?」
千秋「まあ、いいじゃん」
ジトっと見た杏璃を笑って受け流し、空になったカップを持って千秋は立ち上がった。
千秋「若者から直接話を聞くいい機会でしょ」
「企画のことは別の人に一旦任せて、あんたは天野くんのほうに専念しな」
杏璃「千秋さん…」
千秋は気遣わしげに杏璃を見た。
千秋「唐沢にはここで潰れてほしくないからさ」
「(にっと口角を上げて)いずれ私のあとを継いで、うちの課を引っ張ってってもらう予定なんだから」
千秋からの信頼に満ちたセリフに頬を染める杏璃。
杏璃(この人のこういうところ、見習わなきゃなぁ…)
照れくさくなった杏璃は千秋から顔を背けたが、横顔がまだわずかに染まっていて喜びを隠しきれていなかった。
杏璃「やれるところまでやってみます」
千秋「よく言った!」
千秋のカップが杏璃のカップをコツンと小突いた。