甘×辛MIX

2nd step

◯『S.make』オフィス 企画開発部(インターン初日の朝)

※テロップはTと表記

T『インターン初日』

朝のミーティングで、部長とその少しうしろに立つ咲也の姿。
社員はそれぞれ自分のデスクに座ったまま、身体を部長たちに向けている。

部長「──というわけで、天野くんには今日から1週間、インターンとして業務に携わってもらう」
「初日は社内の見学及び業務内容の説明。きみたちと実際に働くのは明日からだ」

部長が手招きすると、咲也が前に出てきた。
着慣れていない感満載のスーツに、フレッシュな笑顔が輝いている。

咲也「天野咲也といいます」
「皆さんのご迷惑にならないよう、精いっぱい努めたいと思います」
「(ビシッと背筋を正した状態で腰を折り)1週間、どうぞよろしくお願いします!!」

後輩1・2「可愛い〜」

悠里「肌きれいねー」

可愛らしい大学生の元気な挨拶に、女性社員は早くも好感を持っていた。
次の千秋の発言で、その場の空気が凍りつく。

千秋「インターン中の案内兼指導役は、サブチーフの唐沢さんに任せています」
「みんなも天野くんのことでなにかあれば、まず彼女に声をかけてね」

スッと笑顔が消える有利と美雪。

美雪「また唐沢さん…」

悠里「いつもなら企画立案で忙しいって言うくせにね」

美雪「相手が可愛い男の子だからじゃないですかぁ?」

くすくす笑う意地の悪い声は聞こえないふりをし、千秋がパンパンと手を叩いた。

千秋「ミーティングは以上。各自自分の業務に入って」
「唐沢、あなたは一緒に来て」

杏璃「はい」

杏璃がカツカツとヒールを鳴らして部署のデスクから出ていく。

初日にして部署内の微妙な空気を感じ取った咲也。
気まずそうに愛想笑いをして、ぺこりと頭を下げてからあとを追いかけた。

千秋のうしろを歩く杏璃は一見無表情だが、わずかに眉間にしわが寄った険しいものになっていた。

杏璃(くっだらない)
(可愛い男の子だからなによ)

イライラしながら、横目で半歩うしろを歩く咲也を見る。
早歩きをする千秋と杏璃を追いかけるため、少々息を弾ませている。
白い頬に赤みが差した姿に、ほんの少しキュンとする杏璃(恋愛的なものではなく、母性本能か庇護欲に近いもの)。
自分の反応をごまかすようにバッと前に向き直る。

杏璃(た、確かに可愛いけど)
(でも私がこの役を受けたのは、大恩ある千秋さんのためで…)

杏璃と咲也の視線がばちりと合った。
邪気のないピュアな笑顔が見つめ返してくる。
ますますキュンとしてしまい、杏璃は咄嗟に胸を抑える。

杏璃(お、恐ろしい子…!)
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