馬花

95 一途

2023/4/1

乙女チュリミは29歳の誕生日を迎えた
その日、18の齢から交際を続けているチャリルと誕生日を祝った

その前日
3/31
乙女は別の男と過ごし、

天秤を揺らした

・・・・

45アネハはチュリミを映画に誘った
弥生の末日を約束の時として、名古屋市内に構えるツバキ座なる映画館で落合う手筈を整えた
門構えには椿の花がその美徳を春ばるしく繚乱させて、誇りと高貴を示した
落ち合った折に、乙女の髪の香が男の鼻腔を刺激した



ヨーロッパは巴里を舞台に、乙女が空想を種として花々を実らせていく。縦横無人に若さを横行闊歩する主人公は怪しげな表情で規則正しく前髪を揃えていた
スクリーンの中の乙女も殻を破る恋をして、美しき女性へと変貌する筈だった



チュリミは恋人がいながら、映画館の暗室で隣に座った男に恋をしていた。

一途な乙女

一途で純朴な女の方が、二股たりうる状況に陥りやすい。至極当然なことで、世間で囁かれる不貞のような状況は、表面的な事象の解説に過ぎない。

男も同様
一途であるが故に、自然と恋人との交際期間は長くなる。3年、5年。10年と
交際期間が長くなれば、恋の天秤を揺らす可能性が高くなるのは当たり前のことなのに。
しかし、純潔こそがあるべき姿と世間的な情報に侵されたステレオタイプは
"一途であること"が己の誇りを構成してしまう。
故に一途なチュリミは、誇りを本能が蝕み、迷い苦しむ。

3・5・10交際して他の男に全く感情を抱かない不自然さが、"世間の発表する" 
愛 純粋 美しさ



不自然過ぎて、バカミタイ



チュリミは恋人チャリルと11年交際していた
今、彼氏の子供を妊娠している
しながら、男とデートをした
映画の最中の胎動がトキメイタ
喜んだのか、怒ったのだろうか、

映画はクライマックスを迎えた
泣けてきた
男の右手から手巾が差し出された
受け取らずに、右の手のひらで涙を拭う
ハンカチを受け入れたら、お腹の赤ん坊がまだ暴れるのが怖かった



映画の内容は頭に入らなかった
泣けてきたのは
手巾を差し出した男が好きだと
確信してしまったからだった

コウノトリの嘴が臍を啄いて
🦅

''土曜でなけりゃ映画も早い



涙ぼろぼろ ぼろぼろ
こぼれて 枯れてから"

🦅
こぼれた笑みは美しく
悪かった
< 58 / 58 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

人人
ハミル/著

総文字数/884

その他4ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop