太陽ひとつ、恋ひとつ
七月二十一日(日)
「よう」
 午前十時、お互いの部屋の前が待ち合わせ場所。
 今日はいわゆる初デート。デート、という単語に違和感を覚える。同時に照れ臭い。感じたことのない緊張に襲われる。
「んじゃあ、行くか」
 ん、と片手を差し出される。意味がわからず凝視していると、「いや、つなげよ」と何故か叱られた。
「なんで」
「なんでって……、付き合ってじゃん、俺ら」
「仮なのに?」
「そうだよ」
 強引につながれる。暑い上に熱い。男子の手ってこんなに熱いのか。そもそも、航大と手をつないだのって何年ぶりだろう。
「知り合いに見られたらどうすんの?」
「無視する」
「話しかけられたら?」
「付き合ってるって言う」
 どうしてこうも即答できるのか。
「てかお前、水着も持ってねえのかよ」
「仕方ないでしょ、何年も必要なかったんだし」
「行きたかったなー、最近オープンしたあのプール……」
 本当は今日、隣町にあるプール施設に向かう予定だった。しかし私がスクール水着しか持っていなかったため、急遽「私の水着を買いに行く」プランに変更となった。
「仕方ねえからプランBにしたけども」
 名称があるらしい。本来のプールのプランはAだったのか。
「ちなみにビキニのBだから」
 聞いてもいないのにわざわざ説明してくる。返事代わりに溜息をついた。
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