初恋の糸は誰に繋がっていますか?


『聞いてる?』
「はい」
『聞きたいことがあるんだけど』
「状況が状況ですので話せる範囲なら」
『仕事のことじゃない、プライベートのことだ。
森山常務と結婚したって噂を聞いたけど、あくまで噂、だよな?』

もうそっちに知られていたなんて。
彼の苛立ちが電話越しでも強まっているように感じた。

『もしかして逃げた家って、女友達じゃ無く常務の家なのか?』
「プライベートなことはお話しできません」
『それは冷たすぎるだろう、理世。
俺はずっと後悔していて、また奇跡のような再会が出来て嬉しかったんだ。
今度こそ後悔しないようにと君を俺が守りたかった。
なのに、付き合いの浅いあの人が出てくるのはおかしいだろう』
「そんなことない。
元々常務とは同じ会社で、最初に助けてくれたのは常務なの」
『理世、勘違いしてるんじゃ無いのか?』
「え?」
『あんな何もかも持っている人が、一般社員の理世と結婚するなんて変だろう?
もしかしたら裏に付き合っている女がいて、それをカムフラージュするために利用されているかもしれないよ。
そもそも君だって、怖いところを助けられたことで好きだと勘違いしてるだけだ。
冷静に考えてみてくれよ、あんな浮気しそうなエリート主義の男より他に良い男が』
「いい加減にしてください!」

流石に大きな声を出した。
この人は達貴さんの何を知っているというのか。
あれだけ尊敬しているような言い方をしておいて、実際はそう思っていたんだ。

(・・・・・・私を大切だと言いながら、他の女性を抱いていた頃と何も変わってないじゃない)
< 101 / 158 >

この作品をシェア

pagetop