初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「なに、式は挙げないの?写真のみとか」
「まだそういう話はしてなくて」
「入籍も電撃的だったから勢いでやっちゃうかなって思っていたけど、まずは目の前のトラブル処理が先かぁ」

残念という奈津実に、もしも式を挙げるときは呼ぶから来てねなど言えない。
小さい頃は定番かも知れないがお姫様が好きだった。
海外のアニメを見て、美しいドレスを纏うヒロインに憧れた。
だけど普通の人がお姫様になれないことは子供でも知っていて、だけれどお姫様のような服を着られる方法は知っていた。
結婚式を挙げることだ。
そうすればお姫様のようにふわふわなドレスを着ることが出来る。
そんな理由からキラキラした結婚式にだけ憧れた。
結婚式を挙げるには好きな人同士で結婚しなければならないというのも両親を見て知っていたが、父親に結婚式の話をするとそういうことはまだ早いと悲しそうに言われ、隣にいた母が大笑いしていたのを思いだした。

恋なんて当分無理と思っていた私が突然入籍してしまうのだから人生はわからない。
初恋の人が逮捕されることだけでも衝撃だったのに、私には刺激が強すぎる数ヶ月。
今も大きなトラブルで落ち着いていられないことが増えた。
でも自分のことより達貴さんが心配だ。
今日は帰ってこられるだろうかと、奈津実とたわいない話をしながら考えていた。

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