初恋の糸は誰に繋がっていますか?
「サーバーのログに、アクセス記録が残っていた」
「それは、社内の人間がプロジェクトのデータにアクセスしたと」
彼は頷く。
「アクセスに使用したパソコンと時間は特定したが、そのパソコンはフリーで利用できるものだった。
今、防犯カメラで誰がその時間に使用していたかを探している。
おそらくログインした人間と、ログインの際使った社員番号は別人だろうからな」
我が社には自分用のパソコンでは無く、使いたいときに使えるようにフリーのパソコンが十数台ある。
社員が一人で考えたり、他部署の人間と自由に話せる空間をと作ったフロアに置いてあるもので、その時にすぐ使いたくなったときに使用するためのものだ。
あの場所は人の行き来が多く、アクセス時間がわかっても達貴さんの言うように誰かから知った社員番号とパスワードで入られれば、映像で探さなければならないだろう。
「そんなことをした理由はなんなのかな」
「プロジェクトメンバーに入れなかったことを妬んでいたか、単純に俺を貶めたいだけか」
「でもこれが他の人なら諦める状況でも、達貴さんを知っている人ならやり遂げられると思うはずなんだけどよくわかっていない人なのかな」
腕を組んで唸れば、彼は目を細め私の頭を撫でる。
ゆっくりゆっくり撫でるので、遅い時間もあって眠気が襲ってくるのだが、必死に我慢した。
彼の方が疲れているのに私が眠そうにするなど妻として駄目だ。
ただでさえろくに妻として何かしているわけでも無いのに。
「奥さんがそこまで見込んでくれているなら成し遂げないとな」
「私もやれることをやるから一人で抱え込まないでね」
「嬉しいことを言ってくれる」
「そうじゃなくて」
けむに巻かれそうになったので反論すると、大きな手が私の頬に触れた。
ドキリと胸が鳴り、指が頬を撫でる。
ビリビリと彼の指から私の身体に電流が流れるようだ。