初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「私、初恋の人がいるんです」

急な話題に彼は少し驚いたようだったが黙って聞いていてくれる。

「小学校の時にいじめに遭ってて、みんなは放課後一緒に遊ぶのに私にはその相手がいなかったんですよ。
親には友達と遊ぶから遅くなるとか嘘ついて。
両親が共働きだったから、母は長い時間一人で私が家にいさせるのを申し訳なく思っていることは小さな私にもわかりました。
手のかからない良い子でいるためには、いじめに遭ってることも遊ぶ友達がいないことも言えなくて公園の遊具で泣いてた。
大きな象の滑り台なんだけど、下の方が秘密基地みたいに二人くらい入れる場所があって。
そこで泣いてたら声をかけられたんです、その人に」

今も、外からのぞき込んでこられて驚いたことを思い出す。

「彼は近所の中学に通う中学生でした。
あまり表情の無い彼だけど、泣いている私に辛抱強く付き合って慰めてくれたり、よくお菓子までくれたんですよ。
泣いて時間を潰すためだけの時間と場所が、彼に出逢ってから変わったんです。
彼に会いたくて、話を聞いて欲しくて。
でも、酷い迷惑をかけてしまった」
「酷い迷惑?」
「公園で彼を待っていたら不審者に連れて行かれそうになったんです。
そこを彼が助けてくれました。
私は今もその辺りの記憶が曖昧で。
お兄ちゃんに会いたくて仕方が無かったのに、母が許さないから公園にも行けないし。
しばらくして彼から別れの手紙が来ました。
私が迷惑をかけたのに、ずっと私のことばかり気にしていて。
今もその手紙は私のお守りなんです。
ずっと側で彼に支えてもらって。
ここまで思っていたらまた会えないかなって思っていたら」

そこまで話すとため息が出た。

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