初恋の糸は誰に繋がっていますか?

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メンバーは一時解散状態になり、各自本来の溜まった仕事に忙殺された。
そして今回開発したドリンクが出来上がり、プレスリリースの日取りが決まったとプロジェクトメンバーにのみ先行して情報が知らされた。
既に起用する芸能人は決まっていたので、CM撮影や広報関係などまた動き始めたときにまた驚くことが起きてしまった。

「デザインが流れたと言われてるライバル企業とプレスリリース日が同じ?!」

会議で常務から知らされたことに皆が驚き、一人が思わず声を上げた。

「プレスリリース日については私達しか知らないんですよね?!」
「そうだ」

常務の返事にメンバーの表情が強ばる。

「よって、犯人と思われる人物がわかった」
「まさか、このメンバーの誰かとか言わないですよね?」

怯えたような女性の質問に、常務は首を横に振った。

「犯人はここにはいない。
だがまだ名前を伝えることは出来ない。
この情報はこのメンバーにのみ知らせている」

ここに犯人がいないことに安堵しても、言っている内容からして社内の人間ということだろうか。

「証拠を固めているんですね」

男性の言葉に常務は頷く。

「我々だけに知らせる内容であれば食いつくと思っていた。
特にプレスリリース日は知りたいはずだ。
既に目星はついていて、犯人と他にどこかと繋がっているかも調べるために時間がかかっている。
曖昧な状態で逃げられるか、逆にえん罪だと騒がれては意味が無い」

これだけ忙しい中で、常務が慎重に動いていたことを私や皆も知って緊張感が走った。

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