初恋の糸は誰に繋がっていますか?

「犯人に関しては勝手だがここで忘れて欲しい。
何故話したかと言えば、君たちを一度は疑う行動をしてしまったわびだと思ってくれればいい。
それだけ君たちを信じているし、予想以上の商品に仕上げてくれた。
間違い無くライバル企業より売れると私は確信している。
ありがとう」

常務が立ち上がり、深く頭を下げた。
皆がぎょっとして立ち上がる。

「やめてください!常務のせいではないでしょう?!」
「そうですよ!ただでさえ忙しい常務が裏で動いてくれたからこそ出来上がったんです」
「目が回るほど忙しかったですけれど充実していました」
「きっと売れたら特別手当が出るって信じてます!」

最後いつもムードメーカーの男性が流れでそんなことを言ったので、皆目を丸くすると一斉に笑い出した。

「もちろんそれにふさわしい特別手当が出るように上と掛け合おう。
出なかったら社長を恨んでくれ、私も恨む」

真顔で言った常務に、皆はまた笑い出してしまった。
いつしかメンバーの距離は近くなり、常務への信頼は揺るぎないものになったと思う。
これが良い結果をもたらしてくれればと祈るばかりだ。


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