初恋の糸は誰に繋がっていますか?


家に戻ると達貴さんのスマホに誰かから電話がかかってきたようで、彼はすまないと手でジェスチャーすると書斎に入っていた。
私はのろのろと部屋で部屋着に着替えてリビングに行けば、彼がちょうど書斎から出てきたところだった。

「飲み物は冷えた緑茶が良いか?
それとも果汁たっぷりの甘いりんごジュースもあるが」
「・・・・・・りんごジュースがいい」
「了解した」

彼は立ったままの私の頭を撫でると、座っていろと言ってキッチンに向かった。
どさりとソファーに座り、大きなクッションを抱える。

下村さんがあそこまで追い詰められていたなんて。
うちの会社と仕事をするのを楽しみにしていたと言っていたし、それがあらぬ疑いをかけられ切られたのだから、会社での立場も無いのかもしれない。
もしかして会社を辞めていたのだとしたら。
私に助けを求めたかったのに、無視していたから彼はあのようになったのだろうか。
後悔が押し寄せてきてクッションに顔を埋めた。

「少し飲んだ方が良い」

達貴さんの声に顔を上げ、お礼を言ってロンググラスを受け取る。
りんごジュースはかなり濃厚なのに飲みやすく、甘さが疲れている身体を癒やすようだ。
横に座った達貴さんも同じもの飲んでいて、テーブルに置くと私に身体を向けた。

「理世に関わることの話があるのだが、不安な気持ちにさせてしまうかも知れない。
話を聞くか?無理はしなくて良いんだ」

下村さんのことだろう、私は大丈夫です、お願いします、と答える。

「まずは君も知っての通り解雇したあの男がプロジェクトの情報を漏洩していた。
問題はあの男だけでの話じゃ無い、黒幕がいたんだ」
「黒幕?!」
「見知らぬアドレスから仕事の依頼として来たらしい。
『プロジェクトのデザインを盗んでとある企業に渡して欲しい、報酬ははずむ』と。
『そうすれば君は金ももらえるし、自分を飛ばした森山を追い詰めることが出来る』ともあったそうだ。
半信半疑だった男は自分の口座を知らせて前金を要求した。
するとすぐにそれなりの金は振り込まれ、実行に移すようにメールで指示された。
ご丁寧にバレにくい方法まで書いてあったらしい。
男は金ももらえるし俺に復讐も出来るということから承諾した」

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