初恋の糸は誰に繋がっていますか?
見も知らぬ相手からのメールでそんなことをするだなんて。
まるでドラマか何かのようだと思っていると、
「そしてここからは理世に関わることだ」
あの元社員が飛ばされるきっかけになったのは私だ。
私も憎まれていた、そういうことなのだろうと覚悟する。
「あの男は情報漏洩以外にも指示を受けていた。
君を駅から尾行することだ」
声が出なかった。
あの靴音は尾行されていたのか。
しかし何のために。
「あのついてきている男があの人だったんですか。
私もあの一件で恨まれていたんですね」
「確かに男は君のことが気に食わなかったらしい。
だがやったのは一回だけだと言うんだ。
マンションの廊下途中まで尾行した一回だけだと」
どういうことがわからなかった。
一回だけ?
でも今まで何度かあったがあれは単に不審者がいて、私とは面識が無かったのだろうか。
「君と以前昼食の時に会ったことがあったな」
「はい」
「あの時には既につけられていたんだろう」
「そう、です」
「それで色々と調べてみた。
調べたのは警察庁にいる知り合いなんだが。
妻がストーカーに遭っていると言うことで相談していた。
本来は被害者本人が被害届を出してという順番だが、妻は怯えているので夫からという形で対応してもらった。
こういう時のために、法的に君の夫であると言うことは強い」
彼が私との入籍を急いだのもこのことがあったからなんだ。
どれだけ私の知らないところで私のために動いてくれたのだろう。
プロジェクトのことだけではなく、情報漏洩の犯人も探し私のことまで。
「ごめんなさい」
「なぜ謝る?」
頭を下げるしか方法が思いつかない。
「達貴さんはただでさえ忙しいのに私をずっと不安にさせないようにしてくれてる。
今日だって本当は仕事で遅かったはずなのに助けてくれた」
「そのことでまだ続きがあるんだ」
まだ謝らなければと思っていたのに、達貴さんが言葉を続ける。